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駄文を晒してみた2

過去の駄文を晒そう企画第二弾!(何

という訳で、MS始める前に書いた駄文を晒してみる。
駄文なので、もちろん隠してあります(




掌編『夕立の前に』



 今日も部活が終わった。
 
 乗ったバスは部活帰りの生徒で、すし詰め状態。
 いつものことだ。この熱いのにせっかくの冷房も効きやしない。
 バスのエアコンが、悲鳴を上げるように唸り狂っている。
「カズキ、最近のシュート率ひどくない?」
「うるせー」
「うるせー、ってなによ。記録付けてるマネージャーの身にもなってみなさい」
「はいはい、たいへんもうしわけございません」
 胸の辺りで声がする。
 こいつは、うちのバスケ部ただ一人のマネージャー。
 少したれ眼な牙付き女だ。
 混み合うバスの車内は、すでに何人たりとも入りこむ余地がない。
 これどう見ても過積載だよな……。バスの最大積載量ってそんなにすげーのか?
 そんなどうでもいい疑問が頭をよぎった時、シャツが引っ張られた。
「掴まんな。服伸びる」
 こいつはいつも人のシャツをつり革代わりに掴んでくる。
「うるせー」
「まねすんな」
 オレの方が頭丸々一つ分、背が高い。手を伸ばせば天井につく。
 過積載なバスは、つり革競争率がすこぶる高く、乗車後発組なオレ達は、いつも分の悪い争奪戦に強制的に巻き込まれては、連敗記録を更新し続けている。
 こいつにとってオレは、つり革いらずのむかつく野郎なのだ。

 オレがバスに乗ってから停留所をいくつ飛ばしたことだろう。もう乗る余地がないのだから、バスは停留所に止まらず素通りして行く。乗客は駅へ向かう生徒だけ。降りる客はいない。
 過ぎ行く停留所で待ちぼうけを食らっている客の恨めしそうな表情が車窓から見えては、流れていく。
「カズキ、あんたちょっと臭いよ。ちゃんと拭いたの?」
「おまえ、喧嘩売ってんのか?」
「なぁに? ムキになるって事は自覚ありなわけ?」
 見上げてくる牙むき出しの笑顔が憎たらしい。
 天井についた手をそのまま振り下ろしてやろうか。きっといい角度でクリーンヒットするだろう。
 部活が終われば汗を拭く。当たり前だ。サウナ並みに熱気を帯びた体育館で3時間も汗を流しているのだから、拭かないほうが気持ち悪い。それに、デオドラントもちゃんとふっている。少ない小遣いからデオドラント代を捻出するのは相当痛いが、これもバスケットマンの嗜みの一つだ。こいつにこんなこと言われる筋合いはない。
 もう1年と3ヶ月になる。入学して以来、こいつとはずっと同じクラスで同じ部活。一日の半分以上同じ時を過ごしている。
 お互い、「彼氏」「彼女」はいない。絶賛一人身街道ばく進中だ。別に欲しいとも思わない。こいつもいないんだし、オレも別にいらない。なぜだか、そう思ってしまう。
「おまえさぁ、何でオレだけ下の名前で呼ぶんだ?」
 こいつはオレのことを「カズキ」と下の名前で呼ぶ。それも呼び捨てで。
 前々から理由が知りたかった。こいつが他のやつを呼ぶときは「さん」付け「くん」付け、それかあだ名だ。下の名前を呼び捨てで呼ぶのは、オレだけ。出合って3日で呼び捨てにされた。
「何でそんなこと気にすんの?」
 いぶかしげに見上げてくる視線は、まっすぐにオレへと向いている。
「気にしてねぇよ。オレだけ呼び捨てなのが、なんかむかつくんだよ」
 あまりに見つめるものだから、気まずくなって視線を逸らしてしまう。
 何かオレの方が悪者みたいじゃねぇか……。
「ちょっと、どこ見てるのよ」
 逸らした先が悪かった。
「見てねぇ。そんなもん見たくもねぇ!」
 制服の胸元を押さえて、たれ眼の視線は非難のものへと変わる。
 頭一つ分オレの方が背が高い。下の相手が見上げてくれば、当然そこには隙間が出来るのだ。これは不可抗力。まったくの冤罪だ。
「む。傷ついた! カズキは明日のドリンク無しね」
「おまっ! 職権乱用反対!」
 死刑宣告さながらの台詞を吐きながら、ぷいっとそっぽを向かれた。
 バスケは走って何ぼのスポーツだ。
 あの灼熱の戦場を3時間も補給無しで、どうやって生き残れと言うんだ……。
 オレは渋々、この小憎たらしい補給部隊長に「ごめんなさい」と棒読みで謝罪した。

 バスがターミナルに滑り込んだ。
 前方のドアが開き、次々と制服姿の乗客たちが降りていく。
 今まで当たっていた温かい感触が、すっと消えた。
 暖められ、少し汗ばんだシャツにエアコンの風がモロにあたり、夏だというのに寒いほどに感じられた。

「村岡くん、お待たせ!」
 バスから降り立ったたれ目は、恥ずかしげもなく大声で叫んだ。
 バス停と駅を結ぶ通路には、最近知った顔がぽつんと立っている。
 近所の進学校の制服を着たそいつは、声が聞こえるなり嬉しそうに駆け寄ってくる。
 あれじゃまるで犬だな……。
 そんな風にさえ思える光景は、ここ2週間、毎日のように繰り返されている。
「邪魔。そんなとこに突っ立ってたら、後の人が降りられないだろ」
 ことさら邪険にそう言ってしまう。
「……」
 振り向いた牙女は、無言でオレを見上げてくる。
 次々降りてくる後続組は、立ちつくすオレ達を鬱陶しそうに避けては駅へと消えて行く。
「早く行けよ。『彼氏』のお迎えだぜ」
 突っぱねるように言い放つ。
向けられた視線にどうしていいのかわからず、心にも無いことを口にしてしまっていた。
 その時、どすっといい音がオレの中で鳴った。
 たれ目はうつむき、硬く結んだ拳をオレの鳩尾に当てている。殴られたわけでじゃない。ただ当てているだけ。
「まだ違うって言ってるでしょ。アホカズキ……」
 『まだ違う』という言葉がオレをどうしようもなくイライラさせる。
 うつむいているので、顔が見えない。だけど、どんな表情をしているのか、オレはわかってしまった。
 例の「村岡くん」がやってきた。律儀にもオレにまで一礼して、オレの目の前から牙付き女を連れ去った。
 
「カズキ、寄り道すんなよー」
 だから、どうしてオレだけ呼び捨てなんだよ……。
 振り向き大げさに手を振ってくる牙付きたれ目女に、心でそう呟く。
 駅の改札に吸い込まれる二つの人影。
 見たくもないのに、何故か眼で追ってしまう。
 二人が見えなくなり、ふと仰いだ天には、真っ黒な雨雲がオレのことを押しつぶさんとばかりに、迫っている。
「ったく、降るなら降れ……」
 夏特有の夕立雲。人を憂鬱にさせるには最高の代物だ。
「はっきりしろよ……」
 出た言葉の矛先は、この曇天に、だと思いたかった。
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真柄 葉

Author:真柄 葉
WT『舵天照-DTS―』でMS業務に従事する、新米物書き。

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